どこまで用語登録をする?

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こんにちは。

今日は敬老の日ですね。そして週末23日はいよいよ秋分の日。そらちょっと肌寒くなってくるわけだ。そろそろ長そで出さないといけませんねー。

さて、<日刊koinezu>敬老の日特集は、『みんな意外とやってない!?じわじわくる系用語登録テクニック』

翻訳支援ツールとは

翻訳支援ツール。特許翻訳にかかわらず翻訳をされている方のなかには、実際に使われている方も多いのではないでしょうか。存在は知ってるけどイマイチ分かってないなという方もいらっしゃいますので、簡単に説明しておきましょう。

翻訳支援ツールは別名CAT(Computer Assisted Translation)ツールとも言われ、代表的なものには、Trados、MemoQ、Memsourceなどがあります。コンピュータ支援翻訳という名前のとおり、翻訳者の作業負担を軽減させ効率UPをはかるためのツールです。おもな機能は2点、<用語集><翻訳メモリ>。1つめの用語集とは、単語や熟語を英日などの言語ペアセット(例 dog : 犬)でツール上にどんどん登録して蓄積できる、いわば自分専用 “言葉・表現の単語帳”。2つめの翻訳メモリとは、ある程度長い文章単位データをこれまた言語ペアで登録&蓄積できる、いわば自分専用 “翻訳文の図書館”。

用語登録の基本ルール

Trados や MemoQなどのCATツールを使い用語集を作成するとき、みなさんは、あとから再利用することを考えて、きっちりと裏取りをした上で登録していると思います。なぜならデータベースには、そのデータ量と同時にそれぞれの信頼性が求められるからです。いくらデータの量が多くても、使おうとする度にいちいち確認が必要なものばかりだと一向に効率は上がりませんよね。信頼性の高いデータが多く蓄積されることで、あとからじわじわくるワケです。

 裏取りは面倒くさがらず入念に
 そしてコツコツ大量に蓄積していく

思考停止はキケン

人間の脳は、”答えのあるもの” に対しては怠けた態度をとります。逆に、”答えのないもの” に対しては好奇心旺盛にちゃんと働こうとします。なめたヤツですよね。

翻訳中、登録してある用語を支援ツール上でみつけると、答えが見つかったと思ってそれ以上考えることをやめてしまうことがあります。いわゆる思考停止です。なにも考えずわかった気になって次、次、次と安易に進めてしまう危険性があるということです。その危険性を十分に理解したうえで翻訳支援ツールとお付き合いすることが大切です。思い出すという作業はツールにまかせて、脳が本来得意とする、”考える” ”選択する” という作業に専念しましょう。適切な住み分けを意識することで、正確性を保ったまま効率的にサクサク作業を進めることができます。

 用語集は、思い出す手間を軽くするためのもの
 そしてあまった脳力を使い、考えて選択する

さていよいよ、じわじわくる系テクニックです

最初に結論を言うと、以下の2点です。
 多少裏取りがあいまいな用語でも、一応登録しておく
 特許特有の法律表現は、裏取りがあいまいでも一応登録しておく

おいおい、さっき言った内容と逆じゃないか!そう思われるのは当然です。なので、そう思うようになったプロセスを僕個人の経験から書いてみたいと思います。この方法が良いから勧めますというわけではなく、経験上こんな視点を持つようになったよということを読み取って頂ければと思います。

最初は、自分のなかで100%の裏取りをしてからじゃないと用語登録できなかったのですが、最近では、ちょっと微妙な自分で自信が持てない用語でも気付いたら多少は登録するようにしています。迷ったら登録しないという方針から、少し迷っても保留という意味で一応登録しておくという方針、へと変わったということです。登録のハードルを少し下げました。

なぜそうしたかと言うと、”用語の選択精度” が以前と比べて上がっているからです。ツールを使い始めた頃は、用語があたると完全に思考が引っ張られることが多かったのですが、今では、例えば5つの選択肢を見たとしても、文脈に応じて使える使えないを一瞬で判断できるようになっています。考える力、選択する力、いわばフィルターが強化されたことによって、ある程度選択肢が増えても楽に対応できるようになったということです。そして、これはもう使えないなと判断すれば、その場で削除すれば良いのです。これが普通にできるようになれば、量の効果がじわじわきます。

例えばこんなふうに

僕の場合、法律用語は極力見つけしだい片っ端から登録するようにしています。法律的な独特の用語というものは、知らないというだけで変な訳語をあててしまうことになりかねないからです。実際にやらかしたこともあります。できるだけサンプル数を多くストックして無知からくるミスを防ぐ一方で、自分が間違う可能性も十分に意識してその都度現場で裏取りをするようにしています。

用語の登録には、専門書籍や特許事務所の用語集などが比較的信頼性が高く便利です。いくら法律用語といえど訳し方にはブレがありますが、そのブレごと複数登録しておけば、その分自分の視野が拡がることになります。具体的には、専門書籍などを読んでいるときに見つけた法律用語など、例えば、以下のような用語をこまめに登録しています。

  • 一応自明であること(prima facie obviousness)
  • 内在的な開示(inherent disclosure)
  • 予期できない効果(unexpected effect)
  • 阻害要因(teaching-away)

googleで、”用語集” “特許” 、”用語集” “米国特許” などと検索すると、ネットに公開されている特許事務所などのページがヒットします。また、特許庁『諸外国の法令・条約等』からアメリカ合衆国特許規則の翻訳文も利用できます。ほかにも、いろいろ試してみて下さい。重要なのは自分なりにサイトの信頼性をチェックすることです。

最後に

翻訳作業というのは単純な言葉の置き換え作業ではありません。Aという言語で書かれた文章全体の意味を、そっくりそのままの意味でBという言語で記述する作業です。単純なようにみえてやってみると案外難しいものです。話し言葉にせよ書き言葉にせよ、自分の考えを誰か他の人に伝えた瞬間、自分の意図がどのように伝わるかは分かりません。どう解釈するか、結局それは受け取る側しだいなのです。”言葉” とは、常にそうゆうやっかいな性質を持っています。

言葉をあつかう翻訳や通訳という仕事は、翻訳者をしている僕が自分で言うのもなんですが、すごい仕事です。あつかう分野、つまり小説、観光サイト、医薬品情報、金融、法律関連などに応じて、言葉の伝わり方の本質を十分理解した上で、ときに文化面も考慮しながら、表現し直す作業です。

僕がやってる特許翻訳に関して言えば、翻訳文を、常に1つの意味でしか解釈されないように作成する必要があります。できるだけ誤解が生じないように、ではなく、誤解が生じるスキがないように、です。その大事なポイントに頭脳を一点集中させるために、翻訳支援ツールをもっと活用してみるのはいかがでしょうか。

最後の最後に 【書籍のご紹介】

『特許翻訳の実務』という本があります。日米欧それぞれにおける特許法の違い、特許業界における翻訳者の位置づけ、特許翻訳者の仕事内容、具体的な請求項の訳し方など、幅広く分かりやすい表現で書かれています。わかりやすいだけではなく、特許翻訳者として気をつけるべきポイント、成長のヒントなどがつまっていて、非常に良い内容だと思います。

僕は、これからこの本を使って法律の勉強をします。具体的には、今岡憲特許事務所『パテントに関する専門用語集』の解説を参照しながら、本のコピーをノートに貼って自分の理解に落とし込んでいきます。ブログ記事にする価値があれば、またその過程をのせたいと思います(書籍なのでそのまま掲載できませんが)。宜しくお願いします。

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